ITパスポート試験 用語辞典

しょくむぶんしょう
職務分掌
不正や間違いが発生するリスクを減らし、業務が正しく行われるように各担当者の職責と権限を適切に分離すること。業務の担当者と承認者を分ける、特定の者だけにしかできない業務を作らないなど、それぞれの担当者間で適切に相互牽制を働かせることが、内部不正が起こりにくい組織体制につながる。
↓ 用語データを見る
分野:
分野:マネジメント系
中分類:システム監査
小分類:内部統制
出題歴:
H23年特別問43 H24年春期問36
H27年春期問33 H28年春期問26
重要度:
(Wikipedia セグリゲーションより)

セグリゲーション(英:segregation)とは、従業員による誤謬や不正を未然に防止することを目的として、業務における執行者と承認者の権限・職責を分離し明確に定めること、またはそうしたルールを定めることで、従業員をモニタリング(監視)し、不正を未然に防止するような組織設計を行うことをいう。

用語(職務分掌との違い)

職務分掌という用語は、英語で「division of duties(職務の分担)」もしくは「segregation of duties(職務の隔離)」と訳されるものの、従来の日本において用いられてきた職務分掌という用語は、文字どおり、業務を手分けして分担するという意味を持ち、その意味は「division of duties(職務の分担)」に近いものがあった。しかし、誤謬や不正行為を防止することを目的として、企業が内部統制の構築を考える際には、職務を分担するだけでは不十分なことが多い。このような状況下においては、意識的に特定の執行者に集中している業務を分離したり、執行者が自分勝手な行動をとらないよう業務を監視する機能を設けたりすることを考える必要がある。このような目的を持って行われる業務の分掌化を、英語では「segregation of duties (【略】:SOD )」と表現することが多く、内部統制構築支援などにたずさわる外資系の監査法人や、外資系コンサルティング会社では、職務分掌といった言葉とは区別して、セグリゲーションという用語を用いることが多い。

以上からもわかるように、日本語における職務分掌という用語と、セグリゲーションという用語の意味は必ずしも同義ではない。すなわち、セグリゲーションという言葉は、狭義の職務分掌としての意味を有し、職務分掌よりも狭い概念である。しかし、誤謬や不正行為を防止するという明確な目的を持った分掌化である点で、職務分掌という言葉よりも高い次元でセグリゲーションという言葉が用いられることが多い。

従業員不正との関連

企業や組織の中で、従業員不正が発生した場合に、必ずと言っていいほど指摘されるのがセグリゲーションの欠如である。一般に、従業員不正は周囲のモニタリング(監視)機能が喪失している際に発生することが多い。すなわち、従業員は上司や周囲の同僚・部下が誰も自分の行動に関心を払っていない、もしくは監視していないということに気付いた時、不正行為に走る可能性が高くなる。こうした可能性を未然に低減してくためには、特定の担当者に集中している業務を意識的に分離し、従業員を常に監視するような組織設計を行うことが重要となり、これがセグリゲーションの本質とするところでもある。

日常業務におけるセグリゲーション

企業や組織の日常的な業務の中では、従業員による誤謬や不正を防止するため、さまざまなセグリゲーション機能が設けられていることが多い。ここでは、その代表的なものについて述べる。

営業部門におけるセグリゲーション

一般に、商品の販売業務と回収業務をひとりの担当者が行った場合、販売代金の横領といった不正が発生しやすい。したがって、このような不正を防止するためには、販売業務と回収業務を行う担当者を分離するというセグリゲーションが必要になる。また、債権残高などを得意先に対して確認する手続も、営業担当者が単独で行った場合、取引先との癒着による不正が発覚しないリスクがあるため、担当者をセグリゲ―トする必要が生じる。

購買部門におけるセグリゲーション

購買業務においては、発注担当者に業務権限が集中している場合、過大発注を行うことなどによって会社に不利益がもたらされる可能性があるため、必要に応じて稟議手続などを設けることにより、発注権限のセグリゲーションが必要になる。また、発注業務と支払業務を行う担当者が同一である場合、キックバックによる不正が行われる可能性が高いため、業務権限のセグリゲ―トを図らなければならない。

経理財務部門におけるセグリゲーション

経理業務と資金管理業務が同一の担当者によって行われた場合、会計操作などにより巧妙な不正が行われ、資金横領のリスクが高くなる。中小企業においては、有効なセグリゲーションが確立されていないことが多いが、不正を未然に防ぐためにもこれらの業務のセグリゲーションは不可欠であることが多い。

店舗運営業務におけるセグリゲーション

コンビニエンスストアや、飲食店などといった現金を扱う店舗では、商品の販売代金の横領による従業員不正が発生する可能性が高い。しかし、レジなどの対応は単独で行うことが多いため、こういった店舗では、職務の分掌化が非常に難しいことが多い。こういった業種においては、店舗責任者がこまめに実地棚卸を実施したり、ジャーナル(売上記録)の検証を行ったりするようなセグリゲーションを図り、店舗従業員を常に監視するような体制を構築することが重要となる。

情報システムにおけるセグリゲーション

プログラムの開発過程などにおける要件定義やシステム設計の段階では、特定の開発担当者に権限が集中するようなことになると、不正が行われた場合の規模も大きくなる可能性があるため、必要に応じてユーザー部門や責任者がレビューするようなセグリゲーションが図られることが多い。また、システムの運用段階においては、特定のユーザーに権限が過度に集中しないように、アクセス権限を分散することでセグリゲーションが図られる。

出題例

内部統制を考慮した職務分掌として,適切なものはどれか。

[出典]ITパスポート 平成24年春期 問36

  • 申請者自身が承認を行えないように定めた。
  • 長期不在となる上司の権限を部下に委譲した。
  • 早番の担当者の残作業を遅番の担当者に引き継いだ。
  • 一つの作業を複数人で手分けして実施した。
正解 

「内部統制」の用語

「システム監査」の他の分野

「マネジメント系」の他のカテゴリ

このページのWikipediaよりの記事は、ウィキペディアの「セグリゲーション」(改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、このページ内の該当部分はクリエイティブ・コモンズ 表示 - 継承 3.0 非移植 ライセンスの下 に提供されています。


Pagetop