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ITパスポート試験 用語辞典

下請代金支払遅延等防止法したうけだいきんしはらいちえんとうぼうしほう
下請事業者に対する親事業者による優越的地位の乱用行為を取り締まるために制定された法律。納品後60日以内のできるだけ短い期間内で下請代金の支払期日を定めることを義務付けるとともに、製造委託等したときの契約書面の交付義務や親事業者の遵守事項などが規定されている。親事業者の下請事業者に対する取引を公正に行わせることで、下請事業者の利益を保護することを目的としている。
分野:
ストラテジ系 » 法務 » 労働関連・取引関連法規
重要度:

(Wikipedia 下請代金支払遅延等防止法より)

下請代金支払遅延等防止法(したうけだいきんしはらいちえんとうぼうしほう、昭和31年6月1日法律第120号)は、親事業者の下請事業者に対する優越的地位の濫用行為を規制する日本の法律である。独占禁止法の1つを構成する。通称下請法

  • なお、以下で単に条名のみを記す場合、下請法のものをさす。

概要

親事業者が下請事業者に委託業務を発注する場合、親事業者が優越的地位にある。そのため、親事業者の一方的な都合により、下請代金が発注後に減額されたり、支払いが遅延することがある(優越的地位の濫用)。そこで、下請取引の公正化を図り、下請事業者の利益を保護するために、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の特別法として制定された。2003年の改正により、規制対象が役務取引に拡大され、違反行為に対する措置の強化が行われた。

規制対象

親事業者と下請事業者

下請法における「親事業者」と「下請事業者」は次の区分に従って定義されている(2条7項、8項)。いずれも、委託する側が親事業者であり、委託を受ける側が下請事業者となる。

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これらに該当する場合、事業者は会社に限らず、公益法人などでも適用される。また、規定の上では親子会社間の取引であっても適用されることになるが、実質的に同一会社内での取引とみられる場合は、運用上問題とされない。

なお、事業者が直接他の事業者に委託すれば下請法の適用がある場合に、上記の親事業者に該当しない子会社を設立し、その子会社を通じて委託取引を行うことで、下請法の適用を逃れることが考えられる。このような行為を防止するため、親会社と子会社の支配関係や取引実態が一定の要件を満たせば、この子会社は親事業者とみなされる(トンネル会社規制、2条9項)。

取引内容

下請法の規制対象となる取引の内容は、以下の取引である。
製造委託(2条1項)
物品の製造や販売、修理を営んでいる事業者(親事業者)が、「規格、品質、形状、デザイン、ブランドなどを細かく指定して」他の事業者(下請事業者)に物品等(物品、その半製品、部品、付属品、原材料、金型)の製造や加工などを委託する取引。
修理委託(2条2項)
物品の修理を営んでいる事業者(親事業者)が業として請け負う物品の修理の全部又は一部を他の事業者(下請事業者)に委託する取引と、事業者(親事業者)が自社で使用する物品を自社で業として修理する場合に、修理の一部を他の事業者(下請事業者)に委託する取引。
情報成果物作成委託(2条3項)
情報成果物(ソフトウェア、映像コンテンツ、各種デザイン)の提供や作成を営む事業者(親事業者)が、その情報成果物の作成の全部または一部を他の事業者(下請事業者)に委託する取引と、事業者(親事業者)が自社で使用する情報成果物の作成を業として自社で作成する場合に、作成の全部または一部を他の事業者(下請事業者)に委託する取引。
役務提供委託(2条4項)
役務(サービス)の提供を営む事業者(親事業者)が、請け負った役務の全部または一部を他の事業者(下請事業者)に委託する取引。なお、建設業者が請け負う建設工事は除かれており、これについては建設業法の定めるところによる(2条4項)。

親事業者の義務

下請取引にあたって、親事業者は、次のような義務を負う。
書面の交付義務(3条)
発注にあたって、下請事業者に対し、取引内容に関する具体的記載事項を全て記載した書面(三条書面)を交付しなければならない。記載すべき内容は、「下請代金支払遅延等防止法第三条の書面の記載事項等に関する規則」1条1項に定められている。
下請代金の支払期日を定める義務(2条の2)
下請事業者との合意の上で、下請代金の支払期日を事前に定めなければならない。この期日は、納品日から60日以内で、かつできるだけ短い期間内でなければならない。
書類の作成・保存義務(5条)
下請取引が完了したとき、取引記録を作成し、2年間保存しなければならない。
遅延利息の支払い義務(4条の2)
支払期日までに下請代金を支払わなかった場合、納付日から60日を経過したひから実際に支払われた日まで、年14.6%の割合による遅延利息を支払わなければならない。

禁止行為

親事業者の禁止行為として、次のような行為が定められている。
受領拒否(4条1項1号)
下請事業者の責に帰すべき理由がないのに、下請事業者の給付の受領を拒むことをいう。発注の取消しや納期の延期なども受領拒否にあたる。「下請事業者の責めに帰すべき理由」がある場合とは、「下請事業者の給付の内容が三条書面に明記された委託内容と異なる場合又は下請事業者の給付に瑕疵等がある場合」と「下請事業者の給付が三条書面に明記された納期に行われない場合」に限られる。
下請代金の支払い遅延(4条1項2号)
下請代金をその支払期日の経過後なお支払わないことをいう。
下請代金の減額(4条1項3号)
下請事業者の責に帰すべき理由がないのに、下請代金の額を減ずることをいう。原材料価格の下落等を含め、あらゆる名目、方法での減額行為が禁止されている。振込手数料や消費税相当額を支払わないこともこれに該当する。
不当返品(4条1項4号)
下請事業者の責に帰すべき理由がないのに、下請事業者の給付を受領した後、下請事業者にその給付に係る物を引き取らせることをいう。「親事業者が受入検査を行い、いったん合格品として取り扱ったもののうち、直ちに発見することができない瑕疵があったもの」や、「親事業者が下請事業者に受入検査を文書で委任している場合、直ちに発見することのできない瑕疵や、直ちに発見できる瑕疵であっても明らかな検査ミスのあるとき」は、受領後6か月以内であれば返品することができる。
買いたたき(4条1項5号)
下請事業者の給付の内容と同種又は類似の内容の給付に対し通常支払われる対価に比し著しく低い下請代金の額を不当に定めることをいう。「通常支払われる対価」とは、「その下請事業者の属する取引地域において一般的に支払われる対価」をいう。
購入強制・役務の利用強制(4条1項6号)
下請事業者の給付の内容を均質にし又はその改善を図るため必要がある場合その他正当な理由がある場合を除き、自己の指定する物を強制して購入させ、又は役務を強制して利用させることをいう。
報復行為(4条1項7号)
親事業者がこれらの禁止行為をしている場合に、下請事業者が公正取引委員会又は中小企業庁長官に対しその事実を知らせたことを理由として、取引の数量を減じ、取引を停止し、その他不利益な取扱いをすることをいう。
有償支給原材料等の対価の早期決済(4条2項1号)
原材料等を自己から購入させた場合に、下請事業者の責めに帰すべき理由がないのに、当該原材料等を用いる給付に対する下請代金の支払期日より早い時期に、支払うべき下請代金の額から当該原材料等の対価の全部若しくは一部を控除し、又は当該原材料等の対価の全部若しくは一部を支払わせることをいう。これによって、下請事業者の利益を不当に害してはならない。
割引困難手形の交付(4条2項2号)
下請代金の支払につき、当該下請代金の支払期日までに一般の金融機関による割引を受けることが困難であると認められる手形を交付することをいう。これによって、下請事業者の利益を不当に害してはならない。なお、割引困難手形とは、繊維業では90日、その他の業種では120日を超える長期の手形をいう。
経済上の利益の提供要請(4条2項3号)
自己のために金銭、役務その他の経済上の利益を提供させることをいう。これによって、下請事業者の利益を不当に害してはならない。
不当な給付内容の変更・やり直し(4条2項4号)
下請事業者の責めに帰すべき理由がないのに、下請事業者の給付の内容を変更させ、又は下請事業者の給付を受領した後に(役務提供委託の場合は、下請事業者がその委託を受けた役務の提供をした後に)給付をやり直させることをいう。これによって、下請事業者の利益を不当に害してはならない。

取り締まり

親事業者が禁止行為を行っている場合、公正取引委員会は、親事業者に対して、現状回復措置等の必要な措置をとるべきことを勧告するものとされる(7条)。また、公正取引委員会と中小企業庁が共同で定期的に書面調査・立入検査を行っている。さらに、親事業者の義務違反や禁止行為があった場合、立入検査を拒んだ場合などは、50万円以下の罰金が規定されている(10条以下)。
下請法の運用は、大半が警告で処理され、正式に勧告(是正に関して事実上強制力がある行政指導)や罰金刑(公取委から犯罪として告発される)に処された事例はほとんどなかったが、「価格破壊」等の語に象徴される企業の過当競争の激化により下請法に抵触する不法行為の事例が相次いだことから、2003年の改正により違反に対する措置の強化が行われ、2004年以降、公取委は是正を勧告した企業の社名を公表するようになった。この結果下請法に違反した企業名が報道されるようになり、一般にも知られるようになったものの、なおも違反は後を絶たず、著名企業・業界大手企業による違反も目立っている。2012年3月27日、公取委は大創産業に対し、同社が展開する100円ショップ「ザ・ダイソー」にて販売する商品の製造を委託する下請け業者に売れ残り商品を不当に返品するなどしていたとして、下請法違反で再発防止を勧告。同年9月20日には通信販売大手ニッセンホールディングスの子会社ニッセンに対し、商品製造を委託する下請業者に支払う代金を不当に減額し、売れ残りも返品の上送料まで負担させていたとして下請法違反で再発防止を勧告した。下請法による通信販売業者への勧告は全国初となった。更に同月25日、日本生活協同組合連合会に対し、下請業者に支払う代金を不当に減額及び遅延させていたとして、これについても下請法違反で再発防止を勧告。違反総額は519社に対し合計約38億9400万円という巨額にのぼり、史上最高額の違反事件となった。2014年6月27日には、スポーツ用品販売大手「ヒマラヤ」に対し、同社がプライベートブランド商品の製造委託先に売れ残りを不当に返品し、代金を減額させるなどしていたとして、下請法違反で再発防止を勧告した。不当な返品、減額は中小企業45社に対して行われ、2012年3月以降分で約1億400万円に上った。ヒマラヤは2012年3月から4月、スキー用品の販売を終了すると称し、2社に約8400万円分の在庫を不当に引き取らせたほか、受発注システム利用料の名目で実態の伴わない費用を商品代金から差し引くなどし、下請け企業への支払いを約2000万円圧縮した。公取委はこれらを悪質な不法行為であるとして、2013年3月、ヒマラヤに対し立ち入り検査を行った。これを受けヒマラヤは商品を買い戻し、減額分の支払いにも応じたという。更に2014年7月、大創産業が再び売れ残り商品を下請け業者に不当に返品するなどの下請法違反行為に及んだとして、二度目の再発防止勧告を行った。大創産業は一度目の勧告を受けた直後の2012年5月から2013年10月、売れ残った台所用品や文房具など約1億3915万円分について、下請け業者62社に不当に返品していた。更にうち2社に対しては発注前に決定した予定価格を発注時に突如不当に引き下げるという買い叩き行為もしていた。同社は既に不当な返品分・買い叩き分など総額約1億4500万円を62社に支払ったという。勧告時に企業名を公表するようになった2004年以降、2回の勧告を受けた企業は例がなく、大創産業が初めてであった。勧告を受けた事業者のほとんどは「下請法の趣旨を理解していなかった」と釈明していることから、公取委による下請法の内容および運用ガイドラインの更なる周知徹底が必要になっている。

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